内蓋(ピストン)総重量W:
W=ピストン300t+重り(5.8t)×30個+L字型鋼重さ≒480t
一方、タンク圧による上方への力F:
タンク内圧ΔP=500mmH2O=0.05atm=0.05kg重/cm2
(ゲージ圧)
ピストン総面積A=π×(直径)2/4= 3.14× (35m) 2 /4
=9619000
cm2
∴F=ΔP ・A=0.05×9619000=480900kg重≒480t
よって、内蓋の重さとタンク圧はバランスする(初期の発表や報道での、タンク内圧は外気よりも減圧気味であったということは有りえず、約1.05atmであったはず!)。微妙な圧力バランスの下で、一方向の重りが9個も脱落し、周方向バランスが50トン以上(5.8t×9≒52t)も狂った結果、シールゴム(厚さ2.5cm幅7cmのゴム3枚の積層体)がせん断変形(破断)し、ガス漏れと金属摩擦に至ったか。
COG中には石炭中に含まれていた硫黄分が乾留過程で揮発し、硫化水素(H2S)として含まれる。大半はその後の脱硫装置で除去されるが、わずかには残る。このH2Sは鉄を腐食して硫化鉄(FeS)を生成する。たとえステンレス鋼でも部分的腐食を受ける。ことに、今回のように引っ張り応力が作用している場合には、応力腐食割れとして顕在化し得る。環境問題が社会問題化した30年以上前までの脱硫能力はかなり低かったため、稼動年数‐30年での初期の腐食、逆に言えば、30年を超えた設備の稼働上の問題点も今後議論されるべきと考える。 (2003年9月29日 桑原 守)