マグネシウムは硫黄や酸素との親和力が大きく、従来から、溶銑の脱硫剤や溶鋼の脱酸剤としての使用が試みられてきた。ただし、マグネシウムは沸点が1380Kと溶鉄温度より低く、添加時に激しく蒸発するために脱硫・脱酸効率はあまり高くなく、また操作上の安全性に解決すべき課題がある。さらに、金属マグネシウムは高価であるため、その使用コストが高い。当研究室では、マグネシアの炭素またはアルミニウム熱還元反応を用いてその場製造したマグネシウム蒸気をキャリアガスとともに溶鉄中に吹き込み、脱硫・脱酸を行う新プロセスを提案した。本法により、低コストで、迅速に極低硫、低酸鋼を製造することが可能になった。さらに、マグネシウムの吹き込みは安全かつ容易であり、発生スラグ量を大幅に削減できるため、本法は実際の溶銑脱硫、溶鋼脱酸処理に大いに寄与すると期待できる。

その場製造したMg蒸気による溶鉄の脱硫・脱酸