ダイヤモンド半導体/強磁性体ヘテロ接合を用いた新規スピンデバイスの作製

 ダイヤモンド半導体は軽元素半導体である為、スピン−軌道相互作用が非常に小さく、移動度も高い事から大きなスピン拡散長(スピンの揃った電流の流れる距離)が期待できます。スピン拡散長が大きい事はスピントランジスタ等のスピンデバイスを作製する際に大きな利点となります。我々は、この様に優れた物理特性を持つダイヤモンド半導体と強磁性体を組合わせた新規スピンデバイス(スピントランジスタ等)の作製を目指し、研究を行っております。

 ・高効率スピン注入に向けたダイヤモンド/ハーフメタルCo2MnSi積層構造の作製
 スピントランジスタは強磁性体/半導体積層構造を主要構造(右下図)としており、強磁性体から半導体への高効率スピン偏極電流注入(スピン注入)が実現の鍵となります。理論的な考察から、高効率スピンの為に有効な方法の1つとして、スピン分極率(P)が1、即ち、スピンが1方向に揃った電子のみがEFに存在する材料であるハーフメタルを半導体と組合わせる手法が提案されています。我々は、イオンビームアシストスパッタ法により、ホイスラー合金ハーフメタルCo2MnSiをダイヤモンド半導体上にエピタキシャル成長させる事に成功し、更に、400℃以下の低温でのCo2MnSiの結晶成長が、急峻なCo2MnSi/ダイヤモンド積層界面を得るのに必須である事を見出しました。結果として、ハーフメタルCo2MnSi/ダイヤモンドを用いた強磁性ショットキー接合の作製に初めて成功しました(下図)。これらの低温成長Co2MnSi/ダイヤモンドヘテロ接合を用いる事で、今後、ダイヤモンド半導体への高効率スピン注入が期待できると思われます。
                 (Ref.: K. Ueda et al. Appl. Phys. Lett. 103 (2013) 052408)





















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