◆科目名:弾塑性学
     
    ◆科目区分:専門科目
    ◆必修/選択:選択
    ◆授業形態:講義
    ◆単位数:2単位
     
    ◆開講時期:3年 前期
    ◆授業時限:月曜日 2時限( 10:30 〜 12:00 )
     
    ◆担当者:湯川 伸樹(工学研究科 材料プロセス工学専攻)
     5号館 253号室,Tel:789-3572 ,yukawa@numse.nagoya-u.ac.jp
      URL: http://www.numse.nagoya-u.ac.jp/P4/yukawa/dansosei/
     
    ◆問合せへの対応:メールによる質問を随時受け付ける。

    ◆授業のねらいと内容:
       ほとんどの工業材料は、加工されて形を与えられ製品になって初めて役に立つ。材料に形を与える方法は多くあるが、その中でも特にプレスやロールなどで材料に大きな力を加えて変形させる塑性加工は、生産性や材料の利用効率が高いなど特に大量生産に向いており、工業上重要である。そして、材料が塑性加工中にどのような変形挙動をするかを的確に把握することは、その製品の形状そのものや素材をその形状にするための塑性加工プロセス、加工を行う生産機械や金型などの設計を効率的に行う上で大切である。
       プレスなどによって材料にある程度大きな加工力を加えると、材料はばねのように変形する弾性変形と、粘土のように変形する塑性変形が複合した弾塑性変形挙動を示す。そこで本講義ではこのような材料が弾塑性変形するときの材料の変形状態、加工力の状態、材料流れなどを把握する手段として、応力とひずみを力学的に求める解法について学ぶ。
       具体的には、簡単な変形の解析を通して応力・ひずみに関連する基礎的な事項を学習するとともに、実際の加工で生じるような組み合わせ応力下における変形やその具体的解法の一つである剛塑性有限要素解析を学び、塑性加工の力学的解析の基礎を修得する。


    ◆授業計画:

      ○第1週:ガイダンス
         授業の内容、進め方、教科書と参考書、成績評価方法などについて、説明する。

      ○第2週:材料の加工についての概論
         各種材料加工の方法について概説し、地球を中心とした材料の継続的流れの中での材料加工の位置付けについて考える。またその各種加工法の中での塑性加工の位置付け、および塑性加工法の分類、さらには塑性加工における力学の必要性について学ぶ。

      ○第3週:塑性変形の材料科学
         塑性変形のミクロ的な本質である転位による塑性変形、また材料の強度と転位の関係、材料の組織と機械的性質との関係、延性破壊などについて、ミクロ的な視点から考える。またマクロ的な視点から考えるいわゆるレオロジーとしての塑性力学の考え方と、ミクロ的変形との関係について学ぶ。

      ○第4〜5週:一軸変形
         もっとも基本的な変形である一軸変形(単軸引張り、単軸圧縮)を基に、応力とひずみの定義を学ぶ。また一軸引張り試験における応力?ひずみ曲線やその数式表示、塑性変形仕事と応力・ひずみとの関係について学ぶ。

      ○第6〜7週:均等曲げ変形
         曲げ解析の基礎として均等曲げを取り上げ、基礎方程式となるひずみの適合条件や力の釣合い式、モーメントの釣合い式について学ぶ。
         つぎに長方形断面の棒のまげ変形を考え、材料が n 乗則に従う場合、弾完全塑性体の場合における曲げモーメントと曲率との関係、その棒が耐えられる最大の曲げモーメントなどを求める。
         また上下非対称の断面形状をもつ棒の曲げを考え、塑性変形域の進展とそれを考慮した曲げモーメントと曲率との関係の求め方を学ぶ。
         最後に曲げ荷重を加えた後の除荷時の弾性回復(スプリングバック)と材料内部に残留する応力に対する考え方を学ぶ。

      ○第8〜9週:ねじり変形
         基本的なせん断変形である棒のねじり変形における基礎方程式(ひずみの適合条件、力・モーメントの釣合い式)について学ぶ。具体例として薄肉円管のねじり及び中実丸棒のねじりについて、ねじりトルクとねじれ角との関係を考える。

      ○第10〜12週:組み合わせ応力による変形
         物体に3次元的な組み合わせ応力がかかる一般的な場合について、応力の定義、座標変換と主応力の考え方、力のつり合い方程式およびモーメントの釣合い方程式を学ぶ。また材料が塑性変形を開始する応力の条件である降伏条件について学ぶ。
         さらに一般的なひずみの定義や主ひずみの考え方や、応力とひずみあるいはひずみ速度の関係(いわゆる構成方程式)として、全ひずみ理論ならびにひずみ増分理論を学ぶ。

      ○第13〜14週:剛塑性有限要素解析
         現在、塑性加工の CAE の分野でもっとも広く用いられている有限要素法について学ぶ。その中でも特に鍛造や型圧延などの解析でよく用いられる剛塑性有限要素解析を例に、前回までで学んだ様々な基礎式をもとに有限要素法の基礎式がどのように組み立てられていくか、またその結果得られる多元非線形方程式をどのように解くかについて学ぶ。
         また解析例を参考に、このような力学的な解析技術が塑性加工分野における様々な問題の解決にどのように役立っているかについて考える。

      ○第15週:定期試験
         筆記試験により、講義内容の理解度を試験する。
         教科書・参考書・ノート持ち込み不可。


    ◆バックグラウンドとなる科目:
       数学基礎,力学および演習,材料力学第1,材料力学第2

    ◆教科書:
    • 工業塑性力学:増田・室田(養賢堂)
      必要に応じてプリント又はファイルを配付。

    ◆参考書:
    • 塑性加工:鈴木(掌華房)
    • 非線形有限要素法:日本塑性加工学会(コロナ社)

    ◆成績評価の方法:
       毎回の講義で行う小テストまたはレポート(30%)
       定期試験の成績(70%)
      これらの合計で55%以上のポイントを得た学生に単位を認定する。