◆科目名:材料物性学
     
    ◆科目区分:専門科目
    ◆必修/選択:選択必修
    ◆授業形態:講義
    ◆単位数:2単位
     
    ◆開講時期:3年 前期
    ◆授業時限:月曜日 4時限( 14:45 〜 16:15 )
     
    ◆担当者:松井 正顯(工学研究科 結晶材料工学専攻)
     5号館 349号室,Tel:789-3567 ,matsui@numse.nagoya-u.ac.jp
    浅野 秀文(工学研究科 結晶材料工学専攻)
     5号館 351号室,Tel:789-3568 ,asano@numse.nagoya-u.ac.jp
     
    ◆問合せへの対応:電話かe-mailで。

    ◆授業のねらいと内容:
       物質の物理的性質(物性)には電気伝導、磁性、比熱、熱膨張、誘電率、弾性率などがあるが、それらはいずれも電界、磁界、圧力、温度などを変化させたときに物質が示す応答であり、応答の強い物質が機能材料として応用される。例えば、半導体メモリー、各種半導体素子、太陽電池、熱電材料、発光素子、レーザー素子、磁石、磁気ハードディスク、光ファイバー、液晶などがある。その材料の特徴を原子や電子のレベルで本質的に理解することによって、これらの機能材料を的確に使用、製造、開発、研究することが出来る。物性を理解するということは、原子や電子が物質の中をどのように運動し、外乱によってその運動がどのように変化するかを理解することを意味している。ここでは、物質中の自由電子の挙動やフォノンのエネルギー状態に関する物性理論を学び、それぞれの粒子の統計分布関数から物性を計算する。各論では、具体的な機能材料について触れ、それぞれの材料において材料物性学がどのように関わっているかを学ぶ。


    ◆授業計画:

      ○第1週:序論、自由電子モデル (1)
         材料物性学の位置付けとその重要性を講義する。次に、一次元の自由電子モデルに基づいた理論を講義する。

      ○第2週:自由電子モデル (2)
         3次元自由電子モデルに基づいた理論を示し、金属の電気抵抗や熱伝導との関連を、例題を通じて学ぶ。また、自由電子モデルの限界について講義する。

      ○第3週:ほとんど自由な電子のモデル (1)
         周期的ポテンシャルの存在を考慮したほとんど自由な電子のモデルの理論を講義する。特に、ブリルアンゾーンの存在、自由電子モデルで導出できないホール(正孔)の存在などが明らかになる。

      ○第4週:ほとんど自由な電子のモデル (2)
         ブリルアンゾーンの特徴、その描き方、フェルミ面とブリルアンゾーンの関係、電子の状態密度の計算法などを講義する。

      ○第5週:強く束縛された電子の近似法
         ブロッホの定理を使って周期的波動関数を導出し、ポテンシャルエネルギーを入れた簡単なバンド計算法を講義する。また、実際の物質のバンド計算結果を例示し、物性との関わりを講義する。

      ○第6週:格子振動
         原子の連成振動から得られるフォノンの概念を学ぶ。具体的な振動モデルによってフォノンの分散関係と状態密度に関する理論を講義する。

      ○第7週:格子比熱
         フォノンの統計熱力学によって格子比熱を計算する。アインシュタインモデルとデバイモデルの理論を講義し、物質の比熱測定と比較して理論が正しいことを学ぶ。

      ○第8週:熱膨張と電気抵抗
         格子振動によって熱膨張が起こることを具体的に示し、簡単な熱膨張率の計算を行い、熱膨張の原因を考察する。また、ボーズ統計から得られるフォノンの電気抵抗の温度変化への寄与を理論的に示す。

      ○第9週:半導体の電気伝導 (1)
         半導体材料の種類を示す。真性半導体の電気抵抗の温度変化に関するバンド理論を講義し、金属や絶縁体との比較を行う。

      ○第10週:半導体の電気伝導 (2)
         不純物半導体の電気抵抗とその温度変化に関する理論を講義する。また、P/N接合とその整流作用について説明する。

      ○第11週:超伝導体 (1)
         超伝導材料の種類を示す。超伝導現象の基本的実験事実を説明し、永久電流やマイスナー効果の起源を講義する。

      ○第12週:超伝導体 (2)
         超伝導体の熱力学、ロンドンの侵入距離やコヒーレント長などといった超伝導の特性長に関する理論を講義し、優れた超伝導材料とは何かを講義する。

      ○第13週:磁性体 (1)
         物質の磁性の起源に関する簡単な理論を示す。また、磁性体の種類を説明し、磁性材料の磁気特性に及ぼす因子を説明する。

      ○第14週:磁性体 (2)
         磁性材料の特徴を理解するための指標(磁気的性質)を講義し、磁性材料全体の概略とそれぞれの特徴を説明する。また代表的な磁性材料を説明する。

      ○第15週:定期試験
         筆記試験により講義内容の理解度を試験する。
        配布テキスト、参考書、ノートなどの持ち込みは不可。


    ◆バックグラウンドとなる科目:
       結晶物理学,量子力学 A,統計力学 A,数学及び数学演習

    ◆教科書:
       配布テキストを使用する。

    ◆参考書:
    • 固体物理学入門(上,下):キッテル(丸善)
    • 固体物理学:川村 肇(共立全書) など

    ◆成績評価の方法:
       講義で行うレポート(10%)
       定期試験の成績(90%)
      とし、これらの合計で55%以上のポイントを獲得した学生に単位を認定する。