◆科目名:素材プロセス工学第2
     
    ◆科目区分:専門科目
    ◆必修/選択:選択
    ◆授業形態:講義
    ◆単位数:2単位
     
    ◆開講時期:3年 後期
    ◆授業時限:金曜日 4時限( 14:45 〜 16:15 )
     
    ◆担当者:興戸 正純(工学研究科 材料機能工学専攻)
     5号館 537号室,Tel:789-3353 ,okido@numse.nagoya-u.ac.jp
    藤澤 敏治(難処理人工物研究センター)
     共同教育研究施設2号館 426号室,Tel:789-5863 ,fujisawa@numse.nagoya-u.ac.jp
    市野 良一(工学研究科 材料機能工学専攻)
     5号館 539号室,Tel:789-3352 ,ichino@numse.nagoya-u.ac.jp
     
    ◆問合せへの対応:事前に電話かメールで時間を打ち合わせる。

    ◆授業のねらいと内容:
       自然界に存在する金属は、単体で存在することは稀であり、硫化物、酸化物などの酸化された状態で産出されるため、各種のプロセスを経て金属単体にまで還元される。すなわち、金属単体はエネルギーの凝集体ともいえる。非鉄金属材料製造プロセスは、化学熱力学を基礎とする乾式プロセスと電気化学を基礎とする湿式プロセスに大別される。電極反応、高温反応及び溶液化学反応を利用した分離・精製プロセスについて述べ、その中で素材プロセッシングに関する化学熱力学的、電気化学的諸問題の理論的取り扱いについて論じる。


    ◆授業計画:

      非鉄金属の乾式製錬(藤澤)
         代表的な非鉄金属の乾式製造法を取り上げ、これらのプロセス中で利用されている各種の製錬・精製法とその基本原理について説明する。

       ○第1週(藤澤):素材プロセッシングとその物理化学
         酸化物を原料として製造される鉄以外の金属は原料鉱石の大部分が硫化物であり、実際の製錬では多くの場合酸素と硫黄の両者に対する親和力を同時に評価することが必要となる。ここでは、硫黄−酸素ポテンシャル図による酸化鉱と硫化鉱の製錬の原理について説明する。

       ○第2〜3週(藤澤):鉛製錬
         鉛の乾式精錬においては、熱力学的に巧みな各種の不純物分離除去法が取られている。同じ溶鉱炉法を用いた鉄鋼製錬と鉛製錬の比較、これらのプロセスにおける各種の精製法とその熱力学的原理について説明する。
         鉄鋼製錬との比較 焼結・焙焼 溶鉱炉 溶離法 柔鉛 ハリス法 パークス法 灰吹法 ベタートン法 電解精製法 スラグのキャパシティー

       ○第4週(藤澤):銅製錬
         銅はその他の主要非鉄金属と異なり、硫化物鉱石から直接金属銅が製造できる。そのプロセスの特徴と熱力学的原理について説明する。
         マット溶錬 自溶炉 転炉 精製炉 電解精錬 MI炉

       ○第5週(藤澤):亜鉛製錬
         亜鉛はその蒸気圧が高いため、その他の非鉄金属が乾式製錬により液体状態で得られるのに対して、気体状態を経由する。その特徴を生かした亜鉛の製造法とその精製方法について説明する。
         水平レトルト法 立型レトルト法 電熱蒸留法 ISP法 精留塔(Pb塔、Cd塔) 湿式製錬

       ○第6週(藤澤):各種の乾式精製法
         これまでに説明してきた乾式精製法に加え、その他の各種の乾式精製法について説明する。
         溶離による精製 帯融精製 蒸留による精製 第3金属の添加による精製 酸素,硫黄,塩素などによる精製 アルカリ,アルカリ土類化合物の添加による精製 熱解離,不均化反応など特殊な高温化学反応を利用する精製

       ○第7週(藤澤):非鉄金属のリサイクル
         金属を代表とする無機系素材は、反応によりその姿を変えたり消滅したりする有機系化合物とは異なり、本質的に永久不滅の資源である。循環型社会における、物質循環の最後の環を閉じるのは、最終的に戻ってくる廃棄物の素材へのリサイクルであり、それを担うべき素材製造産業の役目は重要である。資源循環型社会構築における素材製造産業の役割、ならびに非鉄金属(銅、鉛、亜鉛等のいわゆる重金属)のリサイクルの現状と課題ならびに最近の研究開発動向等について説明する。


      非鉄金属の湿式製錬(興戸,市野)
         湿式製錬においては、採掘した鉱石を電解液に変換するまでのプロセスと製造された電解液の高純度化、電解採取、電解精製によって金属単体が得られる。代表的な非鉄金属の湿式製造法を取り上げ、これらのプロセス中で利用されている各種の製錬・精製法とその基本原理について説明する。

       ○第8〜11週(興戸):溶液化学反応
         採掘後電解採取に至るまでのプロセスについて説明する。
         選鉱 焼結 酸−塩基反応 酸化−還元反応 浸出 電位−pH図 浄液

       ○第12週(興戸):各種湿式製錬
         現行の湿式製錬プロセスについて説明する。
         銅製錬 亜鉛製錬 ニッケル精錬

       ○第13週(市野):電解採取と電解精製
         採取した金属の精製プロセスを示し、採取と精製の違いについて説明する。また、電解効率、精製純度に及ぼす液中の不純物の影響について説明する。
        アノードスライム 水素過電圧 浴電圧 アノード室

       ○第14週(市野):溶融塩電解
         水溶液中からは電解析出不可能な金属は、非水溶液系の電解質を利用して電解を行う。Al を例に取り上げ、溶融塩中における特異な挙動について説明し、水溶液電解との違いについて説明する。
         アノードエフェクト 金属霧 バイヤー法 ホールエルー法 三層式電解法

      ○第15週:定期試験
         筆記試験によって講義内容の理解度を試験する。
         本、ノート、配布プリントや電卓等の持ち込みは許可しない。ただし、A4用紙一枚の手書きメモの持ち込みは許可する。

    ◆バックグラウンドとなる科目:
       物理化学,材料物理化学,応用熱力学,金属反応論,化学基礎 I & II

    ◆教科書:
       使用しない。(必要に応じてプリント資料を配布する)

    ◆参考書:
    • 非鉄金属製錬:日本金属学会
    • 金属化学入門シリーズ3 金属製錬工学:編集・発行 日本金属学会(丸善)

    ◆成績評価の方法:
       定期試験
      全体で55%以上のポイントを獲得した学生に単位を認定する。