Recent Topics

ギガパスカル領域における超臨界流体を用いた酸化物の結晶成長
結晶格子内にナノ空間を持つ物質の圧縮挙動
超高圧直接窒化反応による遷移金属多窒化物の合成
Perovskite関連化合物の超高圧合成と物性

Topic 1

ギガパスカル領域における超臨界流体を用いた酸化物の結晶成長


 Diamond-Anvil Cellは気密性が高く,液体や気体を封入して数十万気圧まで加圧することができます. さらに赤外レーザーを組み合わせることで高温発生が可能です. 図は2~5 GPa,数千℃の高温高圧状態から,瞬間的に室温に急冷することで育成されたサブミクロンサイズ(<1μm)の中空角柱状ルチル型GeO2およびTiO2単結晶です. この結晶の成長メカニズムとして,超臨界流体の高い溶解度,ごく短時間(<10^-3s)での冷却による原子濃度の不均一, そしてルチル型結晶構造の表面エネルギーが深く関連していると考えられます.
 LASER-DACを用いた超高圧下における結晶成長の研究はほとんどなく,極限状態の結晶成長メカニズムの評価という点で学術的に重要な知見が得られました.


[関連論文 *下線は所属学生]
[1] K. Niwa, H. Ikegaya, M. Hasegawa, T. Ohsuna, T. Yagi, Journal of Crystal Growth 312:10 (2010) 1731-1735
[2] 長谷川正,丹羽健,セラミックス 46 (2011) 378-385
[3] 長谷川正,丹羽健,日本結晶成長学会誌 38 (2011) 4-11
[4] K. Niwa, T. Taguchi, T. Tokunaga, M. Hasegawa, Crystal Growth & Design 11:10 (2011) 4427-4432
[5] K. Niwa, H. Ikegaya, T. Taguchi, S. Muto, T. Tokunaga and M. Hasegawa, Journal of Physics: Conference Series (JPCS) 500 (2014) 022007
[6] 丹羽健,長谷川正,高圧力の科学と技術 24 (2014) 178-187

▲Page Top▲





Topic 2

結晶格子内にナノ空間を持つ物質の圧縮挙動


 ゼオライトやスクッテルダイトのように結晶格子内に空隙を持つような物質は,熱電変換材料や原子ふるいに利用されています. 一方,このような空隙を持つ物質の高圧下における安定性は高圧結晶化学の点から興味がもたれます. そこで我々はスクッテルダイトやゼオライトを希ガス(He,Ar)やその他のガス状物質(CO2,N2)中で圧縮し,その圧縮挙動を高圧その場X線回折測定により調べました. ヘリウム中で圧縮されたゼオライトは加圧途中で急に縮みにくくなる現象の観察に成功しました. この特異な圧縮挙動は,超高圧下で多量のHeが格子内に充填されている状態を示唆していると考えられます.

 一方,スクッテルダイトは前述したように有力な熱電変換材料の候補として期待されています. 熱電変換材料とは熱エネルギーを電気エネルギーとして使うことができる材料です.そのためには高い電気伝導性と,低い熱伝導性を示す物質が好まれます. 一般的にスクッテルダイト化合物の電気伝導は高いですが,同時に熱伝導も高くなってしまいます. 一方,空隙に原子を充填することで,ラットリング効果によるフォノンの散乱により,熱伝導が低減されることが知られています. 特に空隙を形成するフレームワークと結合を持たない元素が重要です.希ガスはそれ自身で安定な電子配置をとり,一般的に他元素と結合しません. 従って,スクッテルダイトの空隙をフレームワークと結合がない希ガスで満たすことができれば,高い熱電変換効率を示す物質の開発に繋がると期待されます. ギガパスカル領域の超高圧力は,原子を空隙へ押し込むための駆動力として認識されていますが, 我々の40 GPaまでの希ガス中におけるスクッテルダイト型CoP3の圧縮実験では,特異な圧縮挙動(例えば格子の膨張など)は観察されませんでした. 今後より高い圧力まで実験をおこなえば,希ガスが充填されたスクッテルダイトの合成が可能かも知れません.


[関連論文 *下線は所属学生]
[1] K. Niwa, D. Nomichi, M. Hasegawa, T. Okada, T. Yagi, T. Kikegawa, Inorganic Chemistry 50 (2011) 3281–3285
[2] K. Niwa, T. Tanaka, M. Hasegawa, T. Okada, T. Yagi, K. Kikegawa, Microporous and Mesoporous Materials 182 (2013) 191–197

▲Page Top▲



Topic 3

超高圧直接窒化反応による遷移金属多窒化物の合成


 白金族元素(Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Pt)は常圧下において窒素に対して不活性で,窒化物を形成しません. ところが2004年および2006年に米国の研究チームが白金(Pt)を40 GPaの超高圧下で窒素と化学反応させることで,PtN2を合成することに成功しました. この研究成果は驚きをもって報告されました. その後,RuとRhを除く他の白金族元素(Ir,Os,Pd)でも同様に超高圧下直接窒化反応から,白金族多窒化物の合成が報告されました.

その後,実験的困難から白金族窒化物に関する研究は停滞しましたが,最近,我々はLASER-DACを用いることで最後まで未発見であったRhとRuの窒化物の合成に成功しました. これによって6種類全ての白金族窒化物の存在が明らかになりました.白金族窒化物の中にはダイアモンドに匹敵する硬さの物質(IrN2)や白金族元素と窒素の特異な化学結合なども指摘されており, その詳細(結晶構造,合成圧力,縮みにくさの指標である体積弾性率)を明らかにすることは,新規機能性材料の開発のみならず結晶化学的な視点においても非常に重要です.


[関連論文 *下線は所属学生]
[1] K. Niwa, D. Dzivenko, K. Suzuki, R. Riedel, I. Troyan, M. Eremets and M. Hasegawa, Inorganic Chemistry 53 (2014) 697-699
[2] K. Niwa, K. Suzuki, S. Muto, K. Tatsumi, K. Soda, T. Kikegawa and M. Hasegawa,
Chemistry-A European Journal 20 (2014) 1–5
[3] 丹羽健,長谷川正 高圧力の科学と技術 24 (2014) 178-187
[4] K. Niwa, T. Terabe, K. Suzuki, Y. Shirako and M. Hasegawa,
Journal of Applied Physics 119 (2016) 065901

▲Page Top▲





Topic 4

Perovskite関連化合物の超高圧合成と物性


ペロブスカイト酸化物は,様々な特性を示すことから『機能性材料の宝庫』と称されています. また,その稠密な結晶構造から現在までに高圧高温合成によって多種のペロブスカイト酸化物が発見・報告されています. そうした中で,我々は通常のペロブスカイト酸化物(化学式 ABO3)には存在しない異なるサイト間を占める3d遷移金属イオン同士の磁気相互作用に期待し,多成分系秩序型の新規ペロブスカイト酸化物の開発に取り組んできました.


DIA型マルチアンビルプレスを用いた6 GPa,1350 Kまでの高圧高温実験の結果,計12例もの秩序型ペロブスカイト酸化物の合成に成功しました.合成した秩序型ペロブスカイト酸化物の精密結晶構造解析より,今まで報告のないAサイトの秩序化に関する新たな因子を発見し,その酸化物の合成指針を構築することができました.また,2 Kから室温にかけてフェリ磁性,傾角反強磁性,短距離磁気秩序と組成によって様々な磁性を示すことがわかりました.これはAおよびBサイトを占める異なる3d遷移金属イオン同士の反強磁性超交換相互作用によるものであると考えられます.この結果を新規多成分秩序型ペロブスカイト酸化物の設計・開発に適用することにより,特異な磁気相互作用を示す物質の合成および新規デバイスの創製につながるものと期待されます.また,これらの新物質は,新しい磁性材料のみならず,新しい触媒材料としても期待することができます.


[関連論文 *下線は所属学生]
[1] G. Shimura, K. Niwa, Y. Shirako, S. Muto, K. Kusaba, M. Hasegawa, Solid State Communications 234-235 (2016) 40–44
[2] G. Shimura, Y. Shirako, K. Niwa, M. Hasegawa, Journal of Solid State Chemistry 242 (2016) 55–62
[3] G. Shimura, K. Niwa, Y. Shirako, M. Hasegawa, Eur. J. Inorg. Chem. 2017 (2017) 835–839

▲Page Top▲



上記の内容以外にもスタッフ,大学院生が様々な研究テーマで実験に取り組んでいます.
当研究室の研究内容に興味をお持ちの方は,教員プロフィールから原著論文を参照して頂くか,直接スタッフにお尋ねください.

▲Page Top▲