スローベリーは、日本では西洋すももといわれている。学名のPrunus spinosaでわかるように、プラムの一種であり、ヨーロッパ、北アメリカ、東洋、北アフリカなどに自生している。イギリスではそれを庭に栽培し、ジャムやピクルスにしたり、ジンにつけ込んでホーム・リカーを作ってきた。そして、そのスローベリー酒は、胃の調子を整えたいときや、腸の具合の悪いときに飲まれてきた。いうなれば、スローベリー酒は、日本の梅酒のような感じで飲まれてきた家庭酒なのであった。
このホーム・リカーをジン・メーカーたちが商業ベースで生産するようになったのが、スロー・ジンなのである。
一般的なスロー・ジンの作り方は、スローベリー(ブラックゾーン/blackthornとも呼んでいる)を軽く破砕し、グレーン・スピリッツに浸漬し、エキス分をスピリッツに抽き出す。約2ヶ月後に濾過し、シロップ、水を加えて製品化する。
メーカーによって、果実の種子ごと一緒に破砕し、核の香り成分まで利用するところと、種子は除いて酒にしていくところがある。また、チェリーを混ぜて浸漬を行うところもある。アメリカ産のスロー・ジンにはそのチェリーの種子から抽出したビター・アーモンド香でくっきりアクセントづけしたものまである。また、イギリスでは、アーモンド・エッセンスを添加したスロー・ジンも見られる。
ゴードン・スロー・ジンはドライ・ジンの超有名メーカー、ゴードン・タンカレー社が、ゴードン・ドライ・ジンの名声に恥じないように、イギリス伝統の味に作り上げたリキュール。スローベリーを選果、破砕し、グレーン・スピリッツに長時間浸漬して作るが、製造過程でチェリーも添加されているようだ。着色料は一切使わないで、ナチュラルに仕上げた製品。