フランボワーズ/framboiseというフランス語は、Fraise(いちご)と、ambrosia(不老不死の効あるという神々の飲食物。転じて、美味この上ないものの意)を合成して生まれた名詞。フランボワーズの日本語はキイチゴ(木いちご)だが、フランボワーズの名の由来を知ると、とたんに幻想的な香味を持った果実というイメージが湧いてくるから不思議である。
クレーム・ド・フランボワーズはフランスの各リキュール・メーカーの競作となっているが、その中でブランド・イメージの高いのがマスネ社の製品だ。
同社は、1870年ジャン・バティスト・マスネが、アルザス地方ヴィレ渓谷でフルーツの蒸留酒を作ったのが始まり。1913年には、ウージェーヌ・マスネがフランボワーズからオー・ド・ヴィー(ホワイト・ブランデー)を作って好評を博し、”マスネといえばオー・ド・ヴィー・ド・フランボワーズ”といわれるほど著名なメーカーとなった。、今も、その製品は、同社の看板商品である。
同社のクレーム・ド・フランボワーズは、そのオー・ド・ヴィーに、同じ原料の果汁を加えて熟成した後、シロップとヴィレ渓谷の天然水を加えて製品化する。果汁の使用割合が、他社の製品に比べて非常に高い。また、中性スピリッツを使わないし、色素や着色料も添加しない。そのため、香りと味わいの両面でフルーツを凝縮したようなデリケートなまろやかさが感じられる。
他社のクレーム・ド・フランボワーズは選果した果実を中性スピリッツに浸漬して数ヶ月熟成させ、砂糖と蒸留水を加えてリキュール化し、濾過して瓶詰めするのが、一般的な製法。ただ、果実としてフランボワーズ一種だけを使うということは少なく、ブラックベリー、ストロベリーなども少量ミックスして、味に奥行きを与えるような製法が採られている。