ディタの開発に当たっては、ペルノ・リカール系のアメリカ、アジア、ヨーロッパ各地の子会社から、若者の嗜好の変化や、ライフ・スタイルの変化、さらには原料面での手当などに関して情報を収集。綿密なリサーチの結果、ライチにスポットを当てることにした。
ライチ(茘枝)は、中国南部原産の果実。この楊貴妃が好んだといわれるフルーツだ。英語では、litchi(発音はリーチ)、またはlychee(発音はライチー)と綴る。固い紅褐色の果皮をむくと、乳白色、半透明の柔らかい寒天状の果肉があらわれる、なかに卵型をした黒褐色の大きな種があるが、果肉からとれやすい。果肉は上品な芳香を放ち、水分多く、甘味も強い。
果実を冷蔵庫で冷やし、果皮をむきながら食べると、中華料理のこの上ないデザートとなる。日本でもすっかり普及しておりこれがないと中華料理の宴が終わらない、といった感さえある。ただし、ライチの熟期は6月から7月にかけて。寿命は短い。そのため、6、7月には日本へ空輸されたものがそのまま供されるが、それ以外の月に出るものは冷凍のものと考えていい。
ディタの製法は、新鮮なライチの果肉からデリケートな香りの成分を抽出し、中性スピリッツに溶かし込み、それにいくつかのフルーツのフレーバーを添加して香りのバランスを取り、シロップ、水、を添加して、ライト・タイプのリキュールに仕上げる。色は。無色透明だ。
ライチの果肉は、上品な香りを持っているといわれるものの、じっくり味わうと土っぽいムッとくる風味もひそんでいる。ほのかな酸味のほかに、ごく僅かな苦みも含まれている。それらが総合されると、人によっては”苔っぽい”と感じることがある。このディタは、そうしたライチの個性をうまく押さえ、優雅な香りだけを抽き出すのに成功している。
なお、この製品は、日本以外ではソーホー/SOHOという名称で売られている。ソーホーとは、ロンドンやニューヨークの盛り場として有名な地区の名でそうした場所のレストランやクラブで愛飲してほしいとの願いからネーミングであろう。しかし、日本ではこのSOHOという商標がすでに他社によって登録されていたため、その名で輸入・販売することができず、やむなく日本向けだけはDITAという名称になっている。中身はかわらない。したがって海外の情報誌を見たり、ヨーロッパのバー、レストランに行ったときにはSOHOのラベルで並んでいるから、”SOHO=日本でDITA”と心得て接したい。