金属基複合材料の完全分離・回収技術の開発

 金属基複合材料は優れた機械的特性を有し,高強度構造材料や機能性材料として近年ますます多方面にて利用されてきているが,複合材料はその特性の故にリサイクルが最も困難な材料のひとつであり,現在までのところその効果的なリサイクル技術は開発されていない。
 本研究では,Al基複合材料を対象に"水溶性フラックス"を用いた"クローズド・リサイクルプロセス"の開発を行ってきた。初めに,フラックスの選定を行ったところ,NaCl-KCl系フラックスにKFを加えたNaCl-KCl-KF系フラックスが,母材料のAlと強化材との分離性に優れ,かつ回収状態も非常に良好であるとの結果を得た。そこで,このNaCl-KCl-KF系フラックスを基にした,クローズド・リサイクルプロセスを開発した。以下に,プロセスの概略を示す。
 まず水溶性フラックスと複合材料を溶融させ,強化材をフラックス中へ移行させる事によりAl合金と強化材を分離し,Al合金は回収する。次に,強化材を含んだフラックスを水溶解し,フラックスのみ溶解させ濾過することで,強化材を分離・回収する。濾液は蒸発・乾燥させフラックスを回収し,リサイクルプロセスに戻す。
 本プロセスの特徴は,フラックスとAl合金間の濡れ性を改善した点にあり,そのため,この系のフラックスによるAl基複合材料のリサイクルプロセスは,強化材に依存しないという点にある。現在のところ,Al-SiC系粒子強化複合材料,Al-Al2O3系粒子強化複合材料に加えて,プレフォーム強化材で構成されるAl-Al2O3系繊維強化複合材料について,本プロセスの有効性を検証した。  なお,本プロセスは特許申請に至っている。